コーヒーに発がん性があるって本当?

Beans Express編集部
2019年1月8日

コーヒーは古くから嗜好品として親しまれ、近年では健康や美容との関連性も見出されたこともあり人気が高まっています。

ですが近年、コーヒーには発がん性があるのではないかという疑いがあるのも確かです。がんになるリスクが高まるなら飲みたくないと考えている人もいるとは思いますが、果たしてコーヒーには発がん性物質があり、それのせいでがんになってしまう可能性はあるのでしょうか?

コーヒーの発がん性は本当に注意しなければならないようなものなのでしょうか。ここではそういった疑問を解決していきたいと思います。

コーヒーの発がん性に関する指摘の歴史と現況

嗜好品の中には必ずしも体にとって良いものではないものが多数ありますが、中でも健康や美容との関連でよく土俵に上げられるのがアルコールとタバコです。

アルコールは中毒で亡くなる方がいたり、タバコに関しても吸い過ぎで生活習慣病などの健康リスクを負うようになったりしてしまっている人もいます。

ですがアルコールにはストレスを緩和する作用や社会的な場でコミュニケーションを促進させるような良い効果もあるのは確かです。

タバコにも集中力を一時的に高め、ストレスも軽減させる効果があることが知られています。

その魅力とリスクをどう考えるかで摂取するかどうかを各自が判断している状況にあるのです。

コーヒーもまた同様の嗜好品として考えなければならないのも事実です。

コーヒーに含まれている成分の中にはクロロゲン酸のように抗酸化作用を示すものもあり、臨床試験によって高血圧のリスクを減らすのにも寄与することが示されてきました。

健康のために毎日一杯のコーヒーを飲む習慣を作ったという人も大勢います。

しかし、昔からカフェインが多く含まれているため、その健康への効果は賛否両論だということもまた事実ではあります。

覚醒作用によって眠気を減らし、集中力を高める効果がある一方、不眠症の原因にもなることがわかっているのがカフェインです。

また、妊婦が飲むと胎児の健康に良くないという指摘もあるため、カフェインを取り除いた所謂デカフェのコーヒーも流通するようになりました。

一方、1991年に国際がん研究機関ではコーヒーに発がん性がある可能性を指摘しました。

この発表はマスコミにも取り上げられ、がんや健康、あるいはコーヒーに興味を持っていた人にとって大きな衝撃となりました。

それ以降、コーヒーの安全性に関する研究が活発に行われるようになりましたが、結果として1997年には世界がん研究基金は発がん性に対して否定的な発表をしています。

その内容によると通常範囲の摂取では、がんの発症とコーヒーの引用の関係について統計的有意性は見られなかったとなっています。

つまり、科学的根拠に基づく世界的な見方としてコーヒーに発がん性があるとは考えられていないのが実情です。

ですが、近年になってアメリカのカリフォルニア州ではコーヒーの販売会社に対してコーヒーの発がんリスクに関する表示をしたラベルを貼るべきという発表をして物議を醸しています。

過去の発がん性に関する世界的な問題を知っていたかどうかにかかわらず、この発表によってコーヒーはがんになりやすくするものだと毛嫌いする人も出てきました。

健康志向の強い人が多いカリフォルニア州だからこそ、世界に先んじてこのような発表をしたという見解もあり、コーヒーの発がん性を疑う人もまた見られるようになってきているのです。

この内容についてよく理解した上でコーヒーとがんの関係について考える必要があるかもしれません。

コーヒーに含まれている発がん性物質とは

カリフォルニア州で発がん性に関する表示が求められるようになったのには確固たる理由があります。

コーヒーには確かに発がん性が疑われる物質が含まれている場合があるのです。

正確に言えばコーヒー豆にもともと含まれているわけではなく、コーヒー豆を焙煎する過程で生じる可能性が高い物質が指摘されています。

その物質とはアクリルアミドで、発がんリスクのある物質として昔から指摘されており、日本でも特定化学物質として、業務で使用する人は特殊健康診断を受けるように定められている物質です。

アクリルアミドはそのものが体に悪影響を与えるわけではなく、体内で代謝を受けてグリシドアミドに変換されることで発がんリスクのある物質となります。

確かにグリシドアミドはDNAに損傷を与えることが実験室レベルの研究で明らかにされていて、大量に摂取を続ければがんになるリスクはあるでしょう。

ただ、カリフォルニア州の発表した内容はあくまでそのリスクが全くないことを示せていないから表示すべきだということになっています。

この本当の意味を理解することがコーヒーの発がん性について理解する上では欠かせません。

アクリルアミドは焙煎の過程で極少量発生する物質です。

その一部が体内でゆっくりと代謝を受けてグリシドアミドとなって分解されていきます。

その過程で本当にがんになるリスクが高まると言えるほどの影響を及ぼすかというと疑問があるのも事実なのです。

実験室レベルでの発がん性の検証が行われたときには高濃度のグリシドアミドそのものを使っていました。

それと同じような状況が体内で発生する可能性は高いとは言えません。

しかし、100%同じ状況ができないと証明されてもいないため、発がん性のリスクを完全な形で否定できないという考えでラベルに表示することを求めることにしたという経緯があるとのことでした。

グリシドアミドはトーストやフライなどにも含まれている物質です。

空気に触れる状態で高温調理をすると体内でなくても発生してしまうものですが、発生する量は極微量です。

FDAではこのような食品に対して発がんリスクがあることを指摘していますが、それほど懸念して食べまいと考えている人は少ないでしょう。

FDAでもコーヒーやコーヒー豆をリスクのある食品には含めていません。

それほどに発がん性がある食品とはかなり程遠いものなのです。

がんのリスクを低減させる研究結果も

コーヒーを飲むとがんのリスクが高まるという臨床データも実はありません。

基本的には発がんリスクが指摘されてから行われた研究ではがんとコーヒーの因果関係が見出されなかったという結論になっているのです。

それどころか、極めて限られたケースとはいえ、コーヒーは統計的にがんのリスクを低減させていたという研究成果も上がっています。

代表例としてよく知られているのが肝がんのリスクを低減させる効果です。

この研究はコーヒーをほぼ毎日飲む人と、あまり飲まない人で肝がんのリスクがどの程度違うかを確認したものです。

コーヒーを飲む量に比例するようにして肝がんの発症率が低くなることが示された研究でした。肝がんは死に至るリスクが高いがんとしても知られています。

種類によってはがんのリスクを低減させる効果もあることはコーヒーの魅力として認識しておいた方が良いでしょう。

一方、コーヒーの健康効果についてもがんのリスク低減に寄与すると考えられる部分があります。

クロロゲン酸は抗酸化作用が強いため、体内で発生した活性酸素による影響による発がんのリスクを下げると期待できるのです。

具体的にクロロゲン酸の摂取によってがんのリスクが低減したという臨床データがあるわけではありませんが、抗酸化物質ががんの予防に良いのではないかという想定から現在も研究は進められています。

その観点からもコーヒーを飲む習慣はむしろがんの予防に役立つと考えられるでしょう。

■コーヒーの発がんリスクは否定できていないだけ

十分に焙煎したコーヒーには発がんリスクがあることは完全に否定できていないのは事実です。

しかし、否定材料がないだけで、発がんを促進してしまう根拠もありません。

むしろがんの予防に関して良い効果を示すという統計的なデータもあります。

カリフォルニア州でラベル表示を求められるようになったのは衝撃的ですが、適度に飲むにはあまり懸念する必要はないと考えましょう。